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Our big bets 2025

YouTube CEO からのレター:2025 年の大きな投資

今年で YouTube が誕生して 20 年になります。この 20 年間で、動画の制作方法や視聴のあり方は大きく進化しました。かつては自分自身の画素が粗い映像を撮影していたクリエイターたちが、今ではスタジオを構え人気のトーク番組長編映画を制作するまでになっています。また、YouTube はいまやパソコンやスマートフォンだけで視聴されるものではありません。米国では、テレビがモバイルを超え、視聴時間ベースで YouTube の主要な視聴デバイスとなっています [1]。さらに、ニールセンの調査によると、YouTube は過去 2 年間、米国のストリーミング視聴時間でトップの座を維持しています [2]。そして、まだ初期段階ではありますが、AI は YouTube におけるコンテンツの制作や視聴のあり方に大きな変化をもたらしつつあります。

20 周年という節目の年を迎えられる感謝の思いと共に、毎年恒例の YouTube における 2025 年の 4 つの大きな投資領域をご紹介します。

#1: これからも文化の中心であり続ける YouTube

私たちは 10 年以上にわたり、「表現する場所をあらゆる人に提供し、その声を世界中に届ける」ことを使命としてきました。それは、他にはない言論の自由や、創造的な表現のためのプラットフォームを提供することを意味します。この活気あるエコシステムが、ミュージックビデオショート動画シリーズ化コンテンツ1 時間のライブ配信など文化的トレンドやファンダムを生み出しています。

2024 年の米国大統領選挙に向けた動きの中でも、それは顕著に表れました。米国の有権者は、選挙関連のコンテンツを求めて YouTube にアクセスし、Joe Rogan によるトランプ大統領のインタビュー(視聴回数 5,500 万回、現在も増加中)や、Saturday Night Live コメディなど、幅広い情報源からのコンテンツを視聴しました。選挙当日だけでも、米国内で 4,500 万人以上が YouTube で選挙関連のコンテンツを視聴しました。一部では、2008 年の「YouTube 討論会」と同様に、今回の米国での選挙を「YouTube 選挙」と呼ぶ声も上がりました。選挙からオリンピックコーチェラ音楽フェスティバル、クリケット ワールドカップまで、世界で注目される瞬間が YouTube 上で展開されています。

カルチャーを牽引するフォーマットの一つであるポッドキャストは、YouTube で勢いを増しています。現在、YouTube は米国でポッドキャストを聴くために最も頻繁に利用されるサービスとなっています。私たちはこれまで、ポッドキャストの体験向上に継続的に投資してきました。そして、多くのクリエイターが、動画と組み合わせることでこのフォーマットがさらに魅力的になることを実感しています。今年は、ポッドキャスト配信者を支援する新たなツールの提供、クリエイターの収益化機会の拡大、そしてポッドキャストの発見をより簡単にするなどに取り組んでいきます。

YouTube は、コンテンツが国境を超えて広がる文化交流の舞台でもあります。2024 年には、フランス人クリエイター、Sarah Lezito の 95% 以上の視聴時間がフランス国外からでした。アラブ首長国連邦のゲーム クリエイター Rima Al Osta の総再生時間の 98% が国外からのものでした。また、オーストラリア発のチャンネル GLITCH が制作したアニメシリーズ「The Amazing Digital Circus」は世界的な話題となり、YouTube の年間ランキングに 8 か国でランクインしました。

YouTube は単なるプラットフォームではなく、文化の中心地です。私たちは、誰もが声を届けられる活気あるコミュニティを育むことにコミットしています。

#2: エンターテイメント業界のスタートアップのような存在になりつつある YouTube クリエイター

どの業界も、発展するためには健全なスタートアップ文化が不可欠です。クリエイターたちは、まさにそのスタートアップ精神をハリウッドをはじめとするエンターテイメント業界にもたらし、新たな制作モデルを取り入れ、スタジオを構えて映像品質を向上させ、創造の可能性を広げています。彼らは、エンターテイメントとそれを支えるビジネスの在り方を大きく変えつつあります。

昨年 11 月、私は Alan Chikin Chow がカリフォルニア州にあるバーバンクにオープンした 1 万平方フィートのスタジオの開設イベントに参加しました。大胆で楽しくカラフルな空間に最先端の機材を揃えたこのスタジオは、世界中の何百万もの視聴者を魅了するエンターテイメントを生み出しています。こうした動きはハリウッドだけにとどまりません。Kinigra Deon はアラバマ州バーミングハムにスタジオを建設しており、昨年 11 月には、チャンネル Mia PlaysKouman のクリエイターが、カナダのノースバンクーバーにスタジオを開設しました。

私たちはクリエイターのビジネスやコミュニティを支えるツールや機能を提供することに尽力しています。広告や YouTube Premium などの従来の収益源を通じてクリエイターの成長をサポートし続けるとともに、新たな収入源となる、クリエイターがブランドと提携して製品を具現化するための新しい方法も取り入れていきます。

あらゆるスタートアップと同様に、クリエイターはビジネスを成長させる新たな方法を巧みに見つけ出しており、YouTube もクリエイターの収益機会をさらに広げる取り組みを続けています。昨年、YouTubeで 1 万米ドルの収益 [3] を上げているチャンネルの 50% 以上が、広告と YouTube Premium 以外の収益源からも収入を得ていました。ショッピングは、多くのクリエイターにとって重要な収益源となっています。たとえば、Bora Claire は、カシミア カーディガンのレビュー動画 1 本で数十万米ドルの売上を記録したと報告しています。さらに、昨年は、チャンネル メンバーシップの登録者数が 40% 以上増加しました [4]。

また、プラットフォーム上のインタラクションを新たなレベルに引き上げ、ファンがお気に入りのクリエイターやコミュニティとより深く関わり、サポートできるよう、さらなる機能の拡充も進めています。先日は、コミュニティ機能(日本未導入)を数千人以上のクリエイターが利用できるようにしました。今年はさらにアクセスを拡大していきます。また、期待をかける新人クリエイターを応援するためのハイプ機能(日本未導入)も世界でより多くの国へ展開していく予定です。

クリエイター主導のスタートアップがもたらす可能性はまだ始まったばかりですが、私たちはその成長のあらゆる段階で支援していきます。

#3: YouTube、新たなテレビの形

ますます多くの人がテレビの画面で YouTube を観ています。1 日に平均で 10 億時間以上の YouTube コンテンツがテレビで視聴されており、米国ではテレビが YouTube の主要な視聴デバイスとなっています [5]。しかし、「新しいテレビ」は「従来のテレビ」とは異なります。インタラクティブな要素が加わり、ショート動画(はい、テレビでも視聴されています)、ポッドキャスト、ライブ配信が、スポーツ、コメディ、トークショーなどの従来のコンテンツと並んで楽しめます。

より多くのクリエイターが大画面向けのコンテンツを制作するようになるなか、私たちは YouTube の魅力をテレビでも最大限に楽しめるよう取り組んでいます。その一環として、モバイル デバイスをセカンド スクリーンとして使って動画にコメントしたり、ショッピングをしたりできるようにしています。また、新機能「Watch With」の試験運用も進めています。この機能により、クリエイターはゲームやイベントに対してリアルタイムで実況をしたり、リアクションを提供できるようになります。昨年、NFL と協力してこの機能のテストを開始しました。今年はフットボール以外のスポーツやさまざまなコンテンツにも展開していく予定です。

コネクテッドTVでの成長は新たな広告主も惹きつけており、QR コードや広告を一時停止するなど、大画面で特に効果的なフォーマットの導入も進めています。定額制サービスも順調に成長を続けています。YouTube TV(米国のみ)の加入者数は 800 万人を超え、YouTube Music と YouTube Premium の加入者数(無料トライアルユーザーを含む)は 1 億人以上に達しました。今後も、「注目プレイ」や「マルチビュー」など、YouTube TV で人気の機能をさらに改善し、YouTube Premium の加入者向けに新たな特典を提供していきます。

革新的な機能、多様なコンテンツ、成長を続ける定額制サービスを通じて、YouTube は新世代のテレビ体験を創造しています。

#4: 誰もがより簡単にコンテンツを制作し、YouTube の体験を向上させるための力となる AI

AI はこれまでも、おすすめ機能の最適化、字幕の生成、有害なコンテンツの特定と削除などを通じて、YouTube の進化を支えてきました。今後も、クリエイターやアーティストの創作活動を支援する AI ツールへの投資を続けていきます。昨年は、ショート動画向けに画像の背景動画の背景インストゥルメンタル サウンドトラックを生成できる Dream ScreenDream Track を一部のクリエイター(日本未導入)に向けてリリースしました。これらの機能にさらに投資し、近々、Veo 2 をDream Screen に導入する予定です。

生成 AI の進化は目覚ましいものですが、クリエイターが AI に最も期待しているのは、AI が日々の制作活動を助けてくれることです。そこで YouTube は、新しい動画のアイデアやタイトル、サムネイルの作成など、クリエイターの日常的な制作プロセスをサポートするツールへの投資を進めています。

また、AI を活用してクリエイターの新たな視聴者の獲得も支援しています。音声吹き替え付きの動画では、総視聴時間の 40% 以上が、吹き替え言語を選択して視聴したものです。昨年は自動吹き替え機能を導入し、クリエイターが複数の言語で動画を吹き替える手間をかけることなく、よりグローバルな視聴者にリーチできるようにしました。今月末には、自動吹き替え機能を YouTube パートナー プログラムのすべてのクリエイターに提供する予定であり、今後もさらに改良を加え、対応言語を拡大していきます。

YouTube における AI 関連のすべての取り組みにおいて、私たちはクリエイターを保護するための適切なガイドラインの構築に注力しています。その一環として、YouTube 上で AI がどのように個人を描写しているかを検出、管理できるようにする新しいツールの開発を進めています。クリエイティブ業界とのパイロットプログラムを通じて、世界で特に影響力のある人物たちが間もなくこの初期段階のテクノロジーにアクセスできるようになり、私たちが検出システムを構築し、管理機能を洗練させるための重要なフィードバックを提供してくれる予定です。

YouTube は若年層のユーザーの安全確保にも万全の注力を注いでいます。そのために開発したのが YouTube Kids であり、保護者向け管理機能も更新しました。また、学習・教育分野への投資も進めており、教育ツールでの動画表示の最適化、動画内のトピックをより簡単に詳しく学べる機能の提供、クリエイターがコースを制作できる仕組みの整備などを行っています。さらに、2025 年には機械学習を使ってユーザーの年齢を推測できるようにすることで、青少年と大人の視聴者を識別し、年齢にふさわしい適切な体験と保護を提供していく予定です。

私たちは、責任ある形で AI の力を活用し、すべてのユーザーにとってより良い YouTube 体験の提供に尽力し続けます。

これからの 20 年を見据えて

YouTube が 20 年にわたり、人々の創作、学習、交流を支えてきたことは、まさに感慨深いものです。次の章へと踏み出すにあたり、YouTube はこれからもクリエイターの皆さんを支援し、コミュニティを育成しながら、世界の「見る・聴く・つながる」体験に革新をもたらし続けていきます。

YouTube を今日の姿へと育ててくれた素晴らしいクリエイター、アーティスト、視聴者、広告主、そしてパートナーの皆様に心から感謝します。次の 20 年で、皆様と共に何を作り上げられるか、今から楽しみです。


[1] 2024 年 12 月現在、YouTube の全サービス対象

[2] Nielsen「The Gauge Report」、2023 年 2 月~2025 年 1 月

[3] YouTube パートナープログラムに参加

[4] 2024 年 12 月現在

[5] YouTube の全サービスの総再生時間、2024 年 12 月現在